因果関係と相関関係の違い
医療界にいると、毎年いろんな研究レポートが出てきて、
新しい知見、エビデンスとしてアップデートしていくのですが、
その、エビデンスがどういうタイプのものか、
気にしてみるようにしています。
例えば、
「歯周病など口腔衛生に問題があると、
糖尿病や脳卒中に○○倍、なりやすい」。
これは日本語の問題なのかもしれませんが、
まるで、歯周病を治してさえいれば、
糖尿病にはなりにくいのか、というようにも聞こえます。
これは、「相関関係」のレポートです。
医療現場スタッフとすると、
怠け者体質の人が、歯磨きをさぼると歯周病になりやすくなり、
そういう怠け者体質の人が、食事や運動、睡眠にも配慮が足りず、
病気になりやすい、というのが、
本質な気がするのです。
実際に、因果関係のレポートであれば、
歯周病の発展の機序が、どのように、糖尿病の機序を増悪させていくのかという、
そういう感じになるはずなのです。
バレエでも、音楽関係でも、
どうしても、相関関係に導かれたお話が多い気がしています。
もちろん、初期研究として、相関レポートしか出てこないのは
当たり前のことなので、仕方ないのですが、
その次の、因果関係に目を向けた、
すすめた話をするのが難しい傾向にある気がします。
私の知る限り、お仕事としてのダンサーさんや音楽家さんは、
かなりIQが高い方が多いのですが、
(お人柄は個性的なので、そこには触れません)
そういう方は、こちらの理論だった提案を
面白く受け入れていただけますが、
どうしても、既存であったり、ご自身で持論を
「相関関係」だけで導いてきた先生方には、
なかなかハードルが高い印象です。
そこで、思考練習の提案をしてみます。
バレエの場合、分かりやすいのは、
オーストラリアバレエ団のリハスタッフが提言した、
「バーレッスンの最後に、ルルベ練習を追加すると、
故障者が減った」。
という、相関関係のお話です。
故障者が減るのはとても前向きのことで
とてもポジティブかつ、ユニークな提言だったと思います。
これが、因果関係を示していないのは、
ルルベ練習のどの要素が、こういう機序を持ち、
結果として、故障者を減らしたと言い切れていないことです。
ですので、
バレエの先生として、バーレッスンの最後にルルベを入れるというのは、
ポジティブなのですが、
どんなルルベのメニューがセンター練習を始める前に有効なのか、
そこを注意深く観察し、
PDCAサイクル、試行錯誤を重ねていく必要があるのです。
そのなかで、もちろん多くの相関関係を導きだせると思いますが、
そこで、「A>B」と「A=B」を間違えずに、
情報を整理していっていただけると幸いです。
音楽の場合、レポートそのものが少ないので、
たとえに苦心しますが、
漠然と「留学した方がいい」というものを出してみます。
音楽のテクニカルな部分に限らず、
留学は新しい言語で、文化交流であったり、
良い側面があるので、それも踏まえて、
留学はした方がいいのか、ということです。
これは、答えがある程度はっきりしており、
向き不向きがあるというのは分かっていますが、
プロとして一流という言われる演奏家はたいてい海外の方とコンタクトしており、
海外交流があるという、ことだと思います。
因果関係と相関関係、それは似ていても(?)違います。
それが分かると、
より良い指導、練習に近づきやすいと思います。